釣りを再開される方へ 釣り上げた魚の鮮度を保つ締め方と安全な持ち帰り方
釣りの楽しみを最後まで 適切な魚の処理と持ち帰り方
釣りの醍醐味の一つに、釣り上げた魚を持ち帰り、美味しく味わうことが挙げられます。しかし、魚を釣り上げるだけでなく、その後の処理や持ち帰り方を適切に行わないと、せっかくの鮮度が失われてしまったり、思わぬ危険を伴ったりすることがあります。特に、長いブランクを経て釣りを再開される方にとっては、昔の知識と現在の情報に違いがある場合もあります。
この章では、釣り上げた魚の鮮度を最大限に保ち、安全に自宅まで持ち帰るための基本的な知識と方法について解説いたします。適切な方法を身につけ、釣りの楽しみを最後まで満喫していただければ幸いです。
なぜ魚を適切に締める必要があるのか
釣り上げた魚をそのまま放置しておくと、魚は苦しみ、体内で乳酸が生成されます。これにより、死後硬直が早く進み、肉質が劣化しやすくなります。また、雑菌の繁殖も進みやすくなるため、鮮度が落ちる速度が速まります。
魚を適切に「締める」という行為は、魚の苦痛を和らげるとともに、死後硬直を遅らせ、鮮度を長く保つために非常に有効な手段です。これにより、魚本来の美味しさを損なわずに持ち帰ることが可能になります。
魚の締め方と基本的な方法
魚の締め方にはいくつかの種類がありますが、ここでは比較的手軽で効果的な方法を中心に解説します。
活け締め(血抜き)
多くの魚種に有効な基本的な締め方です。魚から素早く血を抜くことで、鮮度低下の最大の原因の一つである血液を体外に出します。
- 魚を固定する: 釣り上げた魚が暴れないようにしっかりと固定します。魚体に触れる際は、ヒレやエラ、口などに注意してください。
- エラを切る: 魚のエラブタを開け、エラの付け根にある太い血管(動脈)を切ります。魚種によっては、尾の付け根を断ち切る方法もあります。
- 海水中または氷水に入れる: 血を抜きやすくするため、切り口を下にして海水中や用意しておいた氷水(海水や真水に氷を入れたもの)に入れます。数分で血が抜けていきます。
- 冷やす: 血抜きが終わった魚は、後述するクーラーボックスに入れ、適切に冷やします。
この方法を行う際は、魚が暴れて怪我をしないように注意が必要です。また、鋭利な刃物を使用するため、取り扱いには十分にご注意ください。
簡易的な締め方
道具が限られている場合や、小型の魚に対しては、脳を破壊する「脳締め」が手軽です。魚の目のやや上、頭部に硬い部分がありますが、そこにピック状の道具などを刺し、脳を破壊します。これにより魚は即死し、鮮度保持に効果があります。ただし、魚種によって脳の位置が異なるため、事前に調べておくか、慣れないうちは活け締めの方が確実かもしれません。
安全な持ち帰りのための準備と方法
魚を締めた後、鮮度を維持したまま安全に持ち帰るためには、適切な準備と方法が必要です。
クーラーボックスと氷の準備
- クーラーボックス: 持ち帰りたい魚のサイズや量、釣行時間に応じて適切なサイズのクーラーボックスを用意します。軽くて持ち運びやすいものを選ぶと、体力的な負担を減らすことができます。容量だけでなく、保冷力も確認しましょう。
- 氷: 魚を冷やすための氷は必須です。板氷やロックアイス、または凍らせたペットボトルや保冷剤などを組み合わせると良いでしょう。長時間の釣行では、多めに用意することをおすすめします。
- 氷の配置: クーラーボックスの底に氷を敷き詰め、その上に魚を置きます。魚を直接氷に当てると、魚体が傷んだり、冷えすぎて凍りついたりする可能性があるため、新聞紙やビニール袋などで魚を包んでから入れるとより丁寧です。魚と魚の間にも隙間を開け、冷気が全体に回るようにします。
- 海水は入れない: クーラーボックスの中に海水を入れると、氷が早く溶けてしまい、保冷効果が低下します。氷と魚だけを入れ、必要であれば魚体や包んだビニール袋に付着した水分を拭き取ります。
持ち帰り時の注意点
- 危険な魚への対応: 釣り上げた魚の中には、ヒレに毒があったり、鋭い歯を持っていたりする魚もいます。これらの魚を扱う際は、厚手のグローブを使用したり、魚ばさみでしっかりと掴んだりするなど、直接触れない工夫が必要です。毒のある魚を持ち帰る際は、安全な場所に保管し、取扱いに十分な注意を払ってください。不安な場合は、無理に持ち帰らずリリースすることも考慮しましょう。
- 特定魚種の規制: 魚種によっては、漁獲量管理のためにサイズ制限や持ち帰り匹数制限が設けられている場合があります。また、繁殖期には禁漁期間が設定されることもあります。釣行前に地域の漁業協同組合や自治体の情報を確認し、法令を遵守してください。遊漁券が必要な河川もありますので、事前に確認が必要です。
- 衛生的 handling: 魚を扱った後は、必ず手洗いをしましょう。また、使用したナイフやハサミ、魚ばさみなどの道具も、雑菌の繁殖を防ぐためにきれいに洗い、乾燥させて保管してください。
- 体調管理: 炎天下での作業や重いクーラーボックスの持ち運びは、体力を消耗します。こまめに休憩を取り、水分補給を忘れずに行いましょう。
まとめ
釣り上げた魚を適切に処理し、安全に持ち帰ることは、釣りの経験をより豊かなものにする大切なプロセスです。魚の締め方やクーラーボックスでの保管方法、そして持ち帰り時の様々な注意点について理解を深めることで、鮮度を保ち、安全に美味しく魚を味わうことができます。
長いブランクがある方も、基本的な手順と現代の保冷グッズをうまく活用すれば、昔の経験に新しい知識を加えて、さらに快適に釣りの後も楽しむことができるでしょう。安全第一で、楽しい釣りの思い出をたくさん作ってください。